Ryzen 5950Xを購入しました。


2020/11/23  2023/2/6更新

2年前に9900Kを購入して満足していましたが、最近IntelとAMDのCPU競争が盛り上がっており、
Ryzen 5000シリーズでIntelを超えたという話があるのと、新しく発売するRadeonのグラボとシナジーがあるとのことでRyzen9の5950Xを購入しました。
私の環境で9900Kから5950Xに変更して性能がどのくらい変わるのかを調べ、空冷(NH-D15)で使用できるのかを調べてみました。
※記事の前半の5950Xはデフォルト値で比較してます。
 記事の後半でPBO調整後とデフォルト比較をしてます。
 PBO + Curve Optimizerについて追記
 AGESA1.2.0.8で使用中の設定を追記

Ryzen 5950Xとi9 9990Kのスペック

公式の仕様書から抜粋。
2年前のCPUとの比較になりますが、コア数とキャッシュの容量がかなり増えました。

仕様 Ryzen 9 5950X Core i9 9900K
プロセス 7 nm 14 nm
コア・スレッド 16コア・32スレッド 8コア・16スレッド
動作クロック 3.40 Ghz 3.60 GHz
最大ブースト 4.90 Ghz 5.00 GHz(全コアは4.70 Ghz)
キャッシュメモリ(L3) 64 MB 16MB
対応メモリ DDR4-3200(最大128GB) DDR4-2666(最大128GB)
PCI-Express Gen 4.0 、16レーン Gen 3.0 、16レーン
TDP 105 W 95 W

検証環境について

変更前後の構成を記載しました。変更となるのはCPUとマザボ、SSDのSN850の3つです。
最近PCを光らすことにはまっており、熱とか吸排気とかの関係でLEDテープやファンの数等の構成を記載しています。

構成 変更後 変更前
CPU Ryzen 9 5950X @PBO 全項目AUTO Core i9 9900K @4.9GHz固定
CPUクーラー Noctua NH-D15
マザーボード ASUS ROG CROSSHAIR VIII HERO (WI-FI) BIOS ver.2502 ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (WI-FI)
メモリ CORSAIR VENGEANCE LPX 32GB (2 x 16GB、3600 CL16)
グラボ Radeon Ⅶ (リファレンスモデル@HBM2 1200MHz設定)
ストレージ SSD 256GB(OS起動用)、HDD 2TB、HDD 1TB、SSD M.2 SN750、SN850
サウンドカード Sound Blaster AE-9
電源 Seasonic PRIME Ultra Titanium SSR-850TR
OS Windows10 Pro 2009(20H2)
ケース Cooler Master MasterCase H500M(20cm 吸気ファン×2、負圧)
その他 LEDテープ×3、LEDファンフレーム×4、14㎝ファン×1、12cmファン×3
グリス アイネックス ナノダイヤモンドグリス JP-DX1
部屋の温度 20℃の環境で計測

ベンチマーク計測結果

検証ソフトは、Cinebench R15、R20、R23(10分設定)、7-ZIP(辞書サイズ32MB)で計測しました。
Cinebench(R20)では、5950Xのシングルスコアが600を超え、9900Kだと500ちょっとしか出てないです。マルチスコアは約2倍程度差が開いてます。
スレッド数が2倍なので当然の結果ですが、7-ZIPでの圧縮・展開の早さを見ると倍近く違うので仕事でZIPファイルを作成するときとかに効果を体感できそうですね。

ソフト名 5950X 9900K
Cinebench R15 Multi:4466 cb Single:271 cb Multi:2117 cb Single:214 cb
Cinebench R20 Multi:10246 pts Single:632 pts Multi: 5060 pts Single:506 pts
Cinebench R23 Multi: 26019 pts Single:1613 pts Multi: 12665 pts Single:1289 pts
7-ZIP 圧縮:115529 KB/s 展開:2334720 KB/s 圧縮: 58368 KB/s 展開: 971720 KB/s

ゲームの計測結果

検証ソフトは、DirectX 11のGTAⅤのベンチマーク、DX12設定のシャドウ・オブ・ザ・トゥームレイダー、 Vulkanのシリアルサム4のベンチで計測。
MHW(DX12)は実プレイの結果を知りたかったので、WQHDのみ計測しました。
※グラボは2世代前のものを使用しているので高FPSは出てないです。

  • GTAⅤは全項目最高設定(MSAA X8)
  • トゥームレイダーは最高設定。AAのはFHD、WQHDともにSMAAで設定。
  • トゥームレイダーはCPUレンダリングとGPUの結果を記載
  • シリアルサム4のアンチエイリアスはSMAA(中)で設定
  • MHWはベンチモードがないため、ミラボレアスをソロでプレイして計測
    (一部を最高設定、もやもやが消えるボリューム品質低で計測)

WQHDの結果(GPUの結果)

最小値を見ると、5~10FPSほど5950Xの方が出ている結果となりました。
トゥームレイダーはフレームが上がったかのかわからないですが、CPUレンダリングはかなり差が開いてます。
MHW:IBは、12分程の計測でモンスターの動作がランダムのため、同一条件ではないですが若干フレームが出るくらいの結果になりました。

ソフト名 5950X 9900K
GTAⅤ 最高: 79 最小:41 平均:55 最高: 72 最小:38 平均:49
SOTTR(GPU) 最高:138 最小:66 平均:87 最高:139 最小:66 平均:88
SOTTR(CPUレンダリング) 最高:498 最小:191 平均:296 最高:474 最小:178 平均:269
Serious Sam4 最高:139 最小:70 平均:104 最高:124 最小:64 平均:91
MHW:IB 最高:103 最小:56 平均:79 最高: 97 最小:48 平均:75

FHDの結果(GPUの結果)

FHDでも5950Xの方が高いFPSがでる結果となりました。 シリサムの最小値が9900Kより低い結果となりましたが、それ以外は9900Kより良い結果になっています。
トゥームレイダーに関してはWQHDと同様、CPUの結果がかなり離れていました。
(SOTTRのベンチではフレームが向上してるかわかりにくかったのでFarCry5で計測すれば良かったと後悔)

ソフト名 5950X 9900K
GTAⅤ 最高:138 最小:59 平均:77 最高:125 最小:36 平均:58
SOTTR(GPU) 最高:210 最小:91 平均:125 最高:213 最小:91 平均:126
SOTTR(CPUレンダリング) 最高:532 最小:201 平均:305 最高:493 最小:182 平均:277
Serious Sam4 最高:186 最小:54 平均:131 最高:160 最小:72 平均:112

OC設定を調整して測定

ここまではPBOの設定をすべてAUTO設定にしてマザボの初期設定値のままで5950Xを使っていました。
PBOの設定を変更して空冷最強クラスのNH-D15でどのくらいの温度とクロックでできるのか調べました。

PBOの設定値変更

すべてデフォルト(PBO等はマザボ設定でAUTO、PPT等もAUTO)の場合ですが、Cineベンチを回すときは3.9Ghz~4.4Ghzを行き来し、温度が59℃でした。
しかし、Prime95やOCCTのデータセット小・AVX2で回してみたところ、制限に引っかかったせいか周波数が3.2Ghz~3.4Ghzとなりました。 Ryzen Masterで見てみると、設定値がPPT142、TDC95、EDC140で各上限に達したため、3.4Ghz程しかでないことが原因でした。

マザボの設定値を「PPT300、TDC220、EDC200、制限温度90度」に変更したところ、Cineベンチはマルチで4.2Ghz~4.8Ghz、シングルで4.8Ghz、OCCTは4.2Ghzまで出ました。 R20のシングルスコアは若干落ちましたが、マルチは伸びています。OCCTはPBO有効だと4.2Ghzで90度にまで達してしまいました。

電圧を下げれば温度も下がると思うので、設定値を「PPT300、TDC220、EDC200、制限温度88度、電圧オフセット-0.1」で回してみました。 するとOCCT実行時は全コア4.2Ghzで82度まで下がりました。82度なら許容範囲内ですね。
OCCTのデータセット小が高負荷なので、実作業で高負荷がかかる動画のエンコードを試してみました。 適当に録画したゲームをAviUtlでH.265出力して試したところ、4.4Ghz~4.5Ghzで最高78度でした。エンコードも早い。

空冷のNH-D15でPBOを使用する場合は、温度制限をするかPPTの値を下げて80度前後に押さえるのが良い感じだと私は思いました。

  5950X(デフォルト) 5950X(PBO・電圧調整)
電圧 デフォルト オフセット -0.1
R20のスコア Multi:10246 pts Single:632 pts Multi:11075 pts Single:615 pts
周波数(R20のマルチ実行時) 3.9Ghz~4.4Ghz 4.2Ghz~4.8Ghz
温度 (R20のマルチ実行時) 最高:59℃ 最高:72℃
周波数(R20のシングル実行時) 4.8Ghz 4.8Ghz
周波数(OCCTデータセット小) 3.2Ghz~3.4Ghz 全コア4.2Ghz
温度 (OCCTデータセット小) 最高:62℃ 最高:82℃
周波数(AviUtl H.265出力) 未計測 全コア4.4Ghz、一部4.5Ghz
温度 (AviUtl H.265出力) 未計測 最高:78℃

固定OCの設定

PBOをオフにしてLLCをLeverl 3に設定、電圧をオフセット -0.1 に変更してOCCTデータセット小が1時間回せる値を確認しました。 結果ですが、4.2Ghzで73℃~80℃になり、4.3Ghz以上を設定するとOSごと落ちてしまい不安定になりました。(電圧を上げても同じ現象。温度が原因?)

OCCTが落ちない範囲でCineベンチを回しましたが、デフォルト設定と比べるとマルチは向上、シングルは下がる結果になりました。PBOを有効にすると処理するコアだけが4.7Ghzくらいになるので差が開いた感じです。 PBO有効時に比べてシングルが少し下がり、電圧を変更してもクロックを上げることができず安定しないので、私は固定OCでの運用を止めてPBOで温度制限を使用します。

  5950X(デフォルト) 5950X(OC固定)
R20のスコア Multi:10246 pts Single:632 pts Multi:10548 pts Single:541 pts
周波数(R20のマルチ実行時) 3.9Ghz~4.4Ghz 4.2Gh
温度 (R20マルチ実行時) 最高:59℃ 最高:64℃
周波数(OCCTデータセット小) 3.2Ghz~3.4Ghz 4.2Ghz
温度 (OCCTデータセット小) 最高:62℃ 最高:72℃

PBO2(PBO + Curve Optimizer)

2020/12/12 追記

マザーボードのC8HがついにSAMに対応し、AGESA 1.1.8.0になったためPBO2を使用できる環境になりました。
ASUSのUEFIで設定できる場所ですが、「Advance」- 「AMD Overclocking」にあります。
ここでコアごとに電圧下げ幅を指定できます。 私の環境ですが、電圧のオフセット -0.05 にした状態でCOで全て-15を指定すると、アイドル時に再起動がかかるようになりました。(負荷がかからない状態で電圧が下がりすぎたかも)
なので、電圧はAutoにして「Curve Magnitude」を-7、-10、-15にしました。(Ryzen Masterで★が付くコアを-15、●は-10に)
結果ですが、R20のマルチスコアが11392 ptsになり、シングルスコアが632 Pts になりました。シングル・マルチ共にスコアが若干UPしてます。(+317、+17アップ)

まとめ

  • デフォルト設定の5950XでもOCした9900Kのスコアを超える
  • ゲームにおいて、9900K⇒5950Xにすると5~10FPS程向上
  • デフォルトの5950Xで空冷(NHーD15)は十分に可能
  • PBO有効での空冷も温度制限をすれば運用可能。
  • PBO有効時、OCCTの高負荷時は全コア4.2Ghzで80~90℃で使用できる。
  • PBO有効時、動画のエンコードは全コア4.4Ghzで78℃くらい
  • PBO有効時、Cineベンチを回しても72度前後。スコアは11000前後
  • 全コア4.3~4.7Ghzを目指す場合、空冷では厳しく感じるので水冷を使用した方がよい。

メモ:現在の設定値

2023/02/06 追記

AGESA 1.2.0.8になり安定して使用している設定値について記載します。AGESAを更新するたびにメモリと電圧の調整値が変わり、その都度調整が面倒になったので公式機能で調整しています。 個人用のメモみたいなものですので参考程度に。空冷なのでR23のマルチ実行時は全コア4.3GhzでMAX 84度、スコアが28720pt程度。ゲーム時は全コアフルで動くことは希なので1コア5.0Ghz出ることがあるくらいです。

  • CPU関連の電圧はdefault
  • PPT[240]、TDC[170]、EDC[200]
  • Curve Optimizer(PBO2) ★と●付きのコアが-5、それ以外が-18
  • Precision Boost Overdrive Scalar [10X]
  • Max CPU Boost Clock Override [200]
  • CPU Load-line Calibration [Auto]
  • CPU Power Phase Control [Extreme]
  • CPU Current Capability [130%]